預金などではなく実態は為替変動リスクが多大な投資商品である外貨預金についての評価

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当サイトは外貨預金についてどう解釈しているか(ニュージーランドドル預金を例に)


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頂いたご質問(2019年9月、P子さま、50代・女性)

堀田さま、こんにちは。いつも大変おせわになっております。先日は、子供の預金を私の口座にいれて運用してよいものか、税金についてのご質問をさせていただき、大変ご丁寧なご回答をいただきました。ありがとうございました。

今回は、外貨預金についてです。貴ページでは、外貨預金については書かれていませんが、その理由はやはり、リスクが大きいためでしょうか。先日、楽天銀行から何度もメールが来るので、つい200万を2週間のNZドル10%/年に入れてしまいました。

2週間後、元のお金より減っていてショックを受け、楽天銀行に質問の電話をしました。結果として、利息は無事ついていること、まだ日本円にはなっていないこと、預入時よりも円高になったため、今日本円にすると目減りしてしまうことを教えていただきました。この1週間で、預入時のレートまで回復したので、利息分増えていることがわかりましたが、肝を冷やしました。

また、税金がかかることをまったく想定していなかったので、今慌てています。もう外貨預金はこりごりと思いましたが、1週間、2週間、1か月で結果が出て、レートが戻るまで待って日本円に変えたら、目に見えて利息が稼げるような気もしてしまいます。

手数料や、税金など他の落とし穴があるのでしょうか。手堅い定期預金の鬼でおすすめできない理由があるのだろうなと思います。その理由など、教えていただけましたら、ありがたく思います。



回答:外貨預金は「貯金」ではなく「投資」であり、しかもボッタクリ商品です

P子さま、ご質問ありがとうございました。当方が遠出をしていた関係で、お返事が遅れまして、申し訳ございませんでした。

さて、外貨預金ですね。当サイトで紹介していないのは、これは欠陥商品、あるいはボッタクリ商品に近いと考えているからです。どうしてそう感じるのか、まずは商品としてダメな部分を表にして掲示したいと思います。以下の3点だけで、全くやる価値無しです。

項目 外貨預金 日本円の定期預金
元本 為替変動でリスク大 元本保証
預金保護 外国銀行が倒産しても全く保護なし 1000万円までの預金と利子は保護
コスト 非常に高い コストゼロ



外貨預金は為替変動リスクをマトモに受ける


順に説明します。まず一番大きいのは、外貨預金は為替リスクをマトモに受けて、儲かるか儲からないかは丁半博打の世界に突入する点です。円預金が日本国による元本保証なのに比べると、あまりに違いが大きすぎます。

下記、1990年以降のニュージーランドドル/円(以降AZD/円と表記)の超長期の為替相場です。ご覧の通り、3度の凄まじい円高に見舞われています。緑枠の部分は私も記憶がない過去ですが、青枠はITバブル崩壊、赤枠はリーマンショックです。

それぞれ90円台から40円台まで、相場が半分に堕ちています。見かけの金利に騙されて気軽に外貨預金をする人が多いのですが、「今後の景気は明らかに上向きだろう」と確信が持てるような人以外は、とてもではありませんが、怖くて触れる対象ではありません。

ニュージーランドドル円の長期チャート


直近数年は、黒い矢印の所ですね。AZDの金利が下落傾向にあるため、円との金利差が縮小して、AZD/円相場も下向きです。ニュージーランド以外の諸外国も、現在は金利を軒並み下げる傾向にあり、これは景気が悪化するサインです。

景気が悪化すると、金利差だけでなく、リスク回避の円買いも入りますので、ますます円高傾向になります。タイミング的にも、今は外貨預金などするような時期ではないと考えます。

もしも今後、世界的に何らかの金融ショックが走った場合は、一気に40円台まで下がる可能性は十分あると認識しておきましょう。もしもここから上に上がるような事があれば、単にラッキーだっただけです。運不運にご自身のお金をゆだねる事は、今後はやってはいけません。

ちなみに、当サイトで問題視している外貨建ての生命保険も、みな為替変動リスクをモロに受けます。このような商品群は、一般人には手出し無用であり、為替のトレーダーだけが相手にするようなシロモノだと言えます。



預金保護が無い


日本円での銀行預金が元本保証なのは、預金保護の仕組みが有るからです。合算して1000万円までの元本と、破綻日までの利息を保護してくれます。
https://www.dic.go.jp/yokinsha/page_000109.html#syurui

この点で、外貨預金はこの制度の対象外ですから、預け先のニュージーランドの銀行が倒産したら、預けたお金はパーになります。楽天銀行に預けている訳ではなく、楽天経由で外国の銀行に預けているのです。

外貨預金は元本保証ではない


日本で預ける場合は、「とりあえずメガバンクならば安心」とか、何となくの感覚だけでしかありませんけれども、そういう銀行の選び方が出来ます。しかし、外貨預金など、ほとんどの人は実際にはどこの何と言う銀行に預けられるのかをチェックする事はありません。

平常時は良いでしょうが、もしもリーマンショックのような金融危機が再来したら、為替リスクで大きく目減りするのではなく、倒産でお金がゼロになる可能性もあるのです。



コストが高すぎる


では何故、日本の銀行が外貨預金を募集するのかの答えがこれです。コストが高いから。消費者が支払うコスト=銀行の儲けです。日本円を外貨に換える時、そして満期が到来あるいは中途解約で日本円に戻す時、往復で高いコストを支払う必要があるのです。

以下、外貨預金が銀行にとってどれほど美味しい手数料を「頂戴」出来るのか、ご覧下さい。比較として、為替トレードのFXの世界で取られる手数料も赤字で記します。

「片道」で必要になる手数料
通貨 メガバンクの窓口 ネットバンキング
(楽天銀行の事例)
外貨FXの事例
(DMM-FXの事例)
1米ドル 1円 25銭 0.3銭
1豪ドル 2円 50銭 0.7銭
1NZドル 2円 50銭 1.2銭
1ユーロ 1円50銭 25銭 0.5銭


質問者様の場合、外貨FX口座でNZDを買えば1.2銭しかかからないところ、楽天銀行で50銭もの手数料を抜かれている訳ですね。

1NZDあたり50銭ですから、質問者様が預け入れた8月30日の為替レートは67.11円で、日本円で200万円ですから、2万9802ドルとなります。かける事の50銭で、手数料はなんと、1万4901円も支払っている事になります。

これは円に戻す時も同じで、全く為替変動が無いとすると、2万9802円の手数料になります。銀行は無リスクで、お金をニュージーランドの銀行に横流しするだけでこれほどのお金を稼げるのですから、何度もメールを送り付けて、契約させたくなるというものです。

ちなみに、外貨FXであれば、往復の手数料は715円程度になります。円を外貨に換えて置いておきたい場合は、決して銀行など使わずに、外貨FX口座を利用すべきでしょう。金利に相当するスワップポイントも付きますので、外貨預金など全く行う気が失せます。



レートが戻るまで待って日本円に変えたら利息が稼げる?


この部分の質問は、1週間で預け入れ時のレートまで回復したので利息分増えているという事で、だったら2週間待てば更に利息がもらえて為替が上に上がる分、為替差益と利息の両方を取れるから、もしかしたら美味しいのかもしれないと、そういう意味ですよね。

これについては、一般人がそのような事をやって利益に変えるのは、100%無理だと断言して良いでしょう。そのような事が容易に成り立つのならば、世界中は大金持ちで溢れかえります。私も、もうとっくにやっていて、豪邸で暮らしている筈です。

しかし、そんな人の話しは聞きません。何故かと言えば、為替を含めた相場の世界には、フリーランチ(タダ飯)は存在しないからです。

為替トレードは難しい


外貨預金は瞬時に注文を出してその瞬間に約定するといった事が出来ませんので、1日単位でタイムラグが有るので、為替が急変した時にはコントロール不能になります。

常に売り買いが可能な外貨FXであれば、質問者様のおっしゃるような「トレード」まがいの事は行う事が出来ますので、どうしてもやってみたいならば、一度試してみると良いでしょう。

トレード的な売買で利益を上げる事が出来る人たちは、その世界で何年も猛烈に勉強して、自腹を切った損切りを含めて、数十万円単位(あるいは数百万)のお金を損しながら、自分なりの売買手法を見つけて、そして勝てるようになった人たちしかいません。

気軽な気持ちで、そういった人たちに勝てるような事は絶対にありませんので、間違っても妙な事を考えないようにしたほうが身のためです。



外貨預金は「貯金」ではなくて「投資」なので、利益より損失を重視して判断を!


さて、今まで見てきたように、外貨預金は手出し無用の金融商品です。そして、例えば以下の三菱UFJ銀行の外貨預金を誘うウェブサイトのように、いかにも貯金のように見せかけて人を誘っておりますが、為替変動を取る性質が非常に強い商品ですから、これは完全に投資です

三菱UFJ銀行の外貨預金の広告


投資で重要なのは、利益をどれだけ欲しいという強欲さではなく、その正反対のリスク管理です。でないと、一発でお金を消失させて相場から退場となりかねないからです。例えば、今回のように「金利10%」に釣られて、中身を知らないのに契約してしまうのは強欲さの表れです。

金利10%というと凄まじい高金利に聞こえますが、年利換算では0.38%です。正式に1年物で預け入れるならば、1.5%の金利になります。(2週間の満期の方が金利的には損ですね。)

どうしてこのような「10%」などという提示の仕方をするのかと言えば、前述した為替手数料を、銀行としてはなんとしても稼ぎたいと考えているからです。金利に釣られてはなりません。

楽天銀行の外貨預金


仮に1年物で契約した場合で考えますと、最初にお見せしたAZD/円チャートでは、意識される最高値は、およそ90円になるでしょう。となると、67円で預けたお金が90円になるとしたら200万円は269万円になります。1年間の利息は3万円です。為替差益を入れた「最高」の利益は、272万円になりますね。

しかし、投資をそういう楽観主義で行う人は少なからず破綻します。一方のリスクに目を向けるべきで、意識される最安値の40円台の突入も十分あり得ると考える訳です。

仮に、50円まで下落したとすると、200万円は149万円になります。利息と合わせても152万円となり、24%もの元本割れとなる可能性があると考えます。

上に振れるか下に落ちるかは、目先の確率は五分五分です。私ならこの時点で、こんな割に合わない投資などやりません。しかも、今後の景気の見通しは下だと考えるほうが普通ですから、悪い方向の事を考えておくべきだと思います。

ただし、私は個人的に外貨FXのトレードも本格的に始めています。なぜそのような事をやるのかと言えば、勝てる確率が高いと判断した自分なりの手法があり、しかも外貨預金と違って、下に下がるならば買いだけでなく、売りからトレードを始める事もできるからです。

(この意味が「???」となるのであれば、FXの部分は無視して読んでください。)

以上の事から、大きな損失はどうしても避けたいというのであれば、数千円から数万円程度の損失が出たとしても、損切りしてサッサと外貨預金での「投資」は止めるべきでしょう。今回の質問者様のように、2週間で満期が来るのであれば、もうそれで「打ち止め」にするべきだと思います。

一言でもう一度書くと、上がるか下がるかは確率50%のゼロサムゲームで、多額の手数料がかかる分、期待リターンがマイナスのゲームになります。トレードで「鞘」を抜く事が出来る人以外は、為替で儲けようとする事自体が無理ゲーです。

外貨預金も投資ですから、どうしてもそこにお金を置いておきたいと思う場合は、数々のリスクを承知したうえで、景気がどん底で株価が暴落して、円高で皆が青ざめている時に外貨預金を始めると、勝てる可能性・確率は高まります。為替は確率の勝負ですから、そういう場面で外貨を買いましょう。